システム開発の上流工程をやる時におすすめの本8冊をまとめました。
- はじめての上流工程をやり抜くための本
- 業務システムのための上流工程入門
- システム設計のセオリー
- 情報システム計画の立て方・活かし方
- はじめての業務分析
- 要求定義のチェックポイント427
- 要求仕様の探検学
- 要求を仕様化する技術・表現する技術
本ごとに感想を書いているので、選ぶ時の参考にどうぞ。
目次
はじめての上流工程をやり抜くための本
そもそも業務系のシステムエンジニアが携わる情報システムとは何でしょうか。
本書では「情報を媒介にして連携する業務の仕組み」と定義しています。
システム化企画や要件定義、基本設計といったいわゆる上流工程は、実装のスキルが高いだけでは務まりません。エンジニアリング的に正しい結論を導き出すことはもちろん、その結論に至るように「議論をリードし」「関係者の合意を得て」「周囲の人間を巻き込んでプロジェクトをドライブする」スキルなどが求められます。加えて、業務とIT(コンピュータ)を含むシステム全体を見通せる視点の高さも必要です。求められるスキルの多い上流工程を「はじめてやり抜く」には、いったいどのような心構えで望めばよいのか、どのような準備が必要なのか、どのようなスキルアップの方法があるのか―その答えが、本書にあります。
情報システムの開発アプローチをV字型と捉えた時、以下のようなフェーズに分かれています。
- 経営戦略の策定(経営者の意思に基づくリソース配分)
- システム化計画(事業戦略、ITインフラ検討など)
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- プログラミング、単体テスト
- ソフトウェア結合テスト
- システムテスト
- 業務運用
- システム、プロジェクトの評価
この一連の流れ全体が「情報システム化サイクル」です。
本書では、上流工程と呼ばれる「システム化計画」「要件定義」「基本設計」の部分が解説されます。
こんな話が役に立ちました
- 上流工程に携わるSEは、業界動向、組織、人、システム(業務+コンピュータシステム)、技術動向を知らないといけない
- システム化には3つの側面がある。なぜシステムに投資するのか、何をシステム化するのか、どうシステム化するのか
- 現場を知るため、仮説検証型情報収集を行う(インタビュー、アンケートなど)
- IT投資の効果を見積もりする方法
本書の特徴
- 実際のシステムの話を「物語形式」で伝えているので読みやすい
- 設計するまでの生々しい作業のやり方が分かる(議論、関係者を巻き込む、情報を引き出すなどのテクニック)
読みやすいし、けっこう体系的なのでオススメの一冊
業務システムのための上流工程入門
システム開発のボトルネックは上流工程であり、その業務的知識を持つSEが業務システム開発を成功に導く。というコンセプトのもと、上流工程を解説している本です。
システム開発の仕事は大きく上流工程と下流工程に分かれるが、
下流の詳細設計を担当するSEや日々プログラミングとバグ取りに
明け暮れるプログラマには、「35歳定年説」といわれる年齢的な限界が
立ちはだかっている。続々と登場するプログラミング言語などの
新技術への対応やコスト面で、若手に対して不利な立場におかれるからだ。一方、業務システムの改善要求をどのような設計で実現すればよいかといった基本設計の部分を担当する上流SEは、新技術への対応はさほど求められない。
また、企業の業務や会計の知識が必要とされる上流SEは熟練者の数が少なく、システムインテグレータ各社も人材確保に躍起になっている。
やりがいもチャンスも大きいのが上流工程の仕事だ。
上流工程について冒険で例えている例がわかりやすかったです
- プロジェクト管理:暗礁を避けて補給を計画する
- 開発プロセス:正確な海図や測量
- プログラミング言語、開発ツール:船を走らせるエンジン
- システム:手に入れようとしている財宝
財宝のある目的地を特定するための、丘での仕事が上流工程です
少々古い本ですが、細かい説明が豊富なので初心者も読みやすいと思います。
本書の特徴
- 図法の解説が豊富
- モデリングパターンとして、データモデリング、業務モデリング、機能モデリングを学べる
システム設計のセオリー
本書はタイトル通り、システム設計に特化した本です。
設計は「覚悟」と「決断」の積み重ねです、という一言が印象的。
※ジョジョっぽくて好きでした
情報システムはたった一つの使命を達成するために存在しています。
適切な時に、適切な人が、適切な情報をインプットすることにより、適切な時に、適切な人へ、必要な情報をアウトプットすること
システム設計には様々な考え方があります。しかし目的は明白です。情報システムの価値を最大化するために、ユーザーと開発チームとを橋渡しして、「ビジネスの要件を正しくシステムの実装へとつなぐ」――これ以外にありません。
本書はその手順を明示します。各工程の目的・作業内容・成果物・留意点を示しながら、データ・業務プロセス・画面UIといった設計対象ごとに「概要定義から詳細定義へ」「論理設計から物理設計へ」と進める手順を説明します。
特定の開発手法や方法論に囚われることなく、情報システムを設計する上で知っているべき原理原則、実装技術や環境変化に左右されない「システム設計のセオリー」を厳選して集約しました。
本書の読者対象
- これまでNWやITインフラを専門に扱っていて、仕事の幅をシステム設計の方面に広げようと思っている人
- 当然、システム担当に任命されたが右も左も分からない人
- フルスタックエンジニアを目指す人
- プログラマーとしてのキャリアに壁を感じた人
などなど。
本書の特徴
- 各工程での、実体験に基づく勘所が載っています。経験が少ない読者はこの本を読むことで、ポイントを抑えられるようになります
- 著者の思いが詰まっていて、気にいる人はすごく気に入ると思います(多田の教科書的ではない)
- 実はかなり網羅性が高い内容なので、リファレンス的にも便利
情報システム計画の立て方・活かし方
経営者と同じ発想で情報システム像を整理する方法論が載っています。
- 経営計画の実現に必要な施策を網羅的に整理する
- 経営計画を実現する情報システムを構築する
- 構築したシステム効果の実現状況を管理する
著者はアクセンチュアの前身のアーサーアンダーセンコンサルティング出身だけあって、ガチガチのコンサルっぽい話が多いです
今は中古本しか無いかも。
経営効果を上げる手段として情報システムの活用は重要です。経営計画(戦略)と綿密に整合した情報システムが構築されたとき、その計画の実現性は格段に高まります。本書は、事業戦略を核とした経営計画(戦略)に合った情報システム計画の立案方法を具体的に紹介します。
はじめての業務分析
本書は業務分析を行うために使われる「コンポーネントモデリング」という手法の解説が中心です。
それ以外にも、業務分析とはなにか、UMLとはなにか、といった初歩の初歩から学べます。
イラストとサンプルで解説する業務分析入門
「システム開発における上流工程」といったイメージが強い業務分析ですが、この技術が役立つのはステム開発の現場ばかりとは限りません。本書では、業務分析の基礎からUMLを使った本格的な分析まで、具体的な例とともにわかりやすく説明しています。
本書の特徴
- 具体例に基づいてモデリングの演習が出来る(そういう意味で、知識が身につきやすい)
- よく使われるUMLを網羅している
要求定義のチェックポイント427
各フェーズごとに、聞くべき事や確認すべきことがまとまっています。
チェックリスト集という感じです。
本書は「今すぐ客先へ向かわなければならないのに、全く準備をしていない」「要求定義は未経験、あるいは経験が浅い」「ベテランだけれど、新しい視点を取り入れたい」というSEのために、今すぐ使えるヒアリングのチェックポイントを紹介する実践的な書籍です。それぞれのチェックポイントは要求定義の段階にあわせて構成されています。必要と思われる項目を取捨選択したり、それぞれの項目の意図を考えたりすることで、要求定義の実務力を身につけることができます。
対象としているフェーズは以下の通り
- 要求定義フェーズ
- 準備フェーズ
- 基盤設備フェーズ
- 要求獲得フェーズ
- 引っ越しフェーズ
本書の特徴
- 各フェーズごとのポイントがまとまっている
- 要求定義のフェーズがかなり細かく分けられているので、要求定義の仕事が中心の人には役立つ
要求仕様の探検学
日本だとエンジニア系のエッセイで有名なG.M.ワインバーグさんの本です。
どのように本音を引き出すか、相手の予断をどのように見つけ出すか、プレッシャのかからない会議をどう運営するか、あいまいさを追放するにはどうしたらよいか。ワインバーグのシステム開発における品質向上策。
要求仕様の探検学 ―設計に先立つ品質の作り込み― / G.M.ワインバーグ D.C.ゴース 著 黒田 純一郎 監訳 柳川 志津子 訳 | 共立出版
本書の特徴
- エッセイ的な作りだが、割と科学的な観点があるのが特徴
- 具体的な話が多いのが役に立つ
要求を仕様化する技術・表現する技術
要求から仕様化する工程の、よくある問題と、それに対してどうすれば良いのかというHOWTOをまとめた本。
開発の根本であり工程すべてに関わってくる「要求の仕様化」について,その重要性からじっくりと解説。「要求」とは何か「仕様」とは何かという本質から説き,仕様書作りの考え方や表現方法を具体的に提示します。第1版では,要求を表現する際に「振る舞い」に注目し,分割・階層化により振る舞いの範囲を狭くして仕様漏れをなくしていく方法を提唱しました。第2版ではその方法論をさらに深め,上位要求の表現や分割・階層化したときの下位層の要求を表現する際に「動詞」を意識する視点を全面的に打ち出しています。
初心者が読んでもあまり得られるものがないと思います。
初心者が2冊くらい他の本を読んだ状態ならば、効果がありそうです
こんな人にオススメ
- ソフトウェア開発をスムーズに進めたいエンジニア
- 相次ぐ「仕様の変更」や「バグの発生」に悩まされているエンジニア
- 要求の仕様化に関心があるすべてのエンジニア
上流工程をやる時に読む本まとめ
私が上流工程に携わる仕事をした時に、勉強した本をまとめました。
最初に読むなら「はじめての上流工程をやり抜くための本」が体系的でいいかなと思います。
本一覧はこちら↓
- はじめての上流工程をやり抜くための本
- 業務システムのための上流工程入門
- システム設計のセオリー
- 情報システム計画の立て方・活かし方
- はじめての業務分析
- 要求定義のチェックポイント427
- 要求仕様の探検学
- 要求を仕様化する技術・表現する技術
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